自分らしさとか、個性とか。無理やり表現しようとしなくても

人生で初めてキャミソールドレスというものを買いました。Anandamide Laboratorium(アナンダマイドラボラトリウム)のマキシリネンドレスがそれ。

「日常にドレスを」のコンセプトのもと、身長167センチのデザイナーminaさんがマキシ丈で着こなすために制作したドレスです。

40代半ば。人生の折り返し地点とも言うべき年齢になって、まさかドレスを買うとは……。しかもキャミソールドレスなんて、どんだけチャレンジャーなんだよ、と自分へのツッコミが止まらない。

身長170センチ大柄、けっして細身とは言い難いガッチリ体型。普段はボーダーシャツにダメージジーンズ、ゆるっとしたニットにワイドパンツといった組み合わせが定番のスタイル。

ボーイッシュ、メンズライク。そんなファッションばかりを好んできた私が手に取った人生初のドレスです。(初ドレスっていうのは言い過ぎか。そういえば23年前にウェディングドレスを着たんだった。レンタルだったけど)

パンツにしてもスカートにしても、身長が高い私には“丈感”が非常に重要なのですが、市販品には高身長の女性を意識して作られたものが少ないのが長年の不満。

いやいやいや、丈の違いだけでおおげさな……と思われるかもしれないけれど、たった5センチ、いや3センチ。ほんの少しの丈の差がおしゃれの完成度を左右するんですよ。

丈が足りないことによって生まれる、服と靴のすき間。そこにほんのりとした“ダサさ”が漂うのです。スキニーパンツだって、そのまま履くには微妙に丈が足りない。だからあえて裾をまくってバランスをとるという工夫を必要とするのです。

そんなだから、どんだけおしゃれなデザインの服でも、どんだけ有名なブランドの服でも、背の高い私がクリアすべきは、実は“丈”問題だったりする。

着丈だけじゃなく、袖丈、パンツ丈(股下)だってそう。「ああ、ちょっと足りない…」試着室で感じる軽い絶望感。背の高い(あるいは腕の長い、足の長い)女性だったら、誰もが感じたことがあるのではないでしょうか。

いつか世の中の背の高い女性たちと顔を突き合わせて真剣に語り合いたいくらいです。

幼いころからの体型コンプレックス。容姿について心無い言葉を掛けられたことも多かった私は、女の子らしさ、女性らしさを感じるアイテムを敬遠しながら生きてきました。

スカートやレース、あるいは赤やピンクといった色味に感じる、嫌悪感にも似た気持ち。みなさんもありませんか? SNSの投稿を見るたびに「私には関係のない話」そう静かに線引きをしてしまうジャンルが。

本当は興味津々なくせに「興味がある」「好きなんだよね」って素直に言えない。

それだけじゃなく「似合ってる!」「かーわいいー」と軽やかなテンションで交わされるトークに、人知れずイラっとしたりザワッとしたり。その集団に気後れする自分と、あえて入らないことを選んでいる自分がいるのです。

私の場合、容姿のコンプレックスから来る自信のなさも確かにあるけれど、それ以上に「もう傷つきたくない」という気持ちのほうが強いのかもしれません。

「好きじゃないこと」にしておけば傷つかなくて済む。失敗もしないし。そうやって繊細で高慢な自分を守ることに、ずいぶんとエネルギーと時間を費やしてきたのでしょうね。

そんな45年を経て出会ってしまったキャミソールドレスには、私の「好き」がふんだんに詰め込まれていました。光に反射して控えめに光る漆黒のリネンにうっとりし、二重になったスカートが揺れるたびに心が小さく踊るのを感じます。

「それどこの?」と聞かれるたびにドレスの魅力を意気揚々と語り、minaさんのセンスやお人柄を語っている熱い自分にも驚いたり。

好きなものを素直に手にとる。好きなものを、ただ好きだと言う。

たったそれだけのことに、いちいちハードルを感じてしまうけれど、そんな自分の中にも「好き」はたくさんあるし、これまでもあったんだよねえとしみじみ思うのです。

誰から指摘されるわけでもなく、心のどこかで感じ続けてきたパーソナリティーの曖昧さ。それはもしかしたら好きを抑え込んできたことによる結果なのかもしれません。

そこから一歩抜け出すには、まずは自分の好きを細やかにキャッチすること。その好きを誰かと共有したくなったら臆せずアウトプットすること。

自分らしさとか、個性とか。そういったものを無理やり表現しようとしなくても、好きを表現した延長線上に必ずそれらは顔を出す。そんな積み重ねが「自分」という輪郭をくっきりさせていくのかもしれません。

minaさんの手がけるドレスInstagramでご覧になれます

▽Anandamaidelaboratorium
https://www.instagram.com/anandamidelaboratorium/